“農家さん”を一括りにしてしまうことの無意味さ②

 今回は経営的な観点から、生産者と最適な流通の関係についてお伝えしたいと思います。当たり前ですが、ほとんどの生産者さんにとって農業とは仕事であり、生産活動によって生活をするための所得を得る必要があります。

 もちろん、生産者さんによっては、営農理念として所得の最大化が第一目的ではない方もいらっしゃいますが、全国の多くの生産者さんにおいては、営農における”所得の最大化“(継続的に営農を続けていく上でも)が重要であることは紛れもない事実だと思います。

 ここでは、それぞれの営農スタイルとそれにあった最適な流通の違いについて、所得を構成する重要な要素である売上という観点から考えてみたいと思います。

 売上の最大化において、下の図でいうと長方形の面積(=売上)をいかに大きくできるかなのですが、売上を構成する要素である単価と数量の両方を同時に大きくすることが実は営農において結構むずかしかったりします(これは農業に限らず、経済活動を行うどの分野でも同じですが)。

標準

 先にあげた生産者さんの例でいうと、北海道の生産者さんは下記のような横に長い長方形になります。

北海道
数量大、単価低

 埼玉の生産者さんは下記のように縦長の長方形になります。

埼玉
数量小、単価高

 農業生産において、当たり前ですが、マーケットでの付加価値が高い無農薬栽培をしようと思うと慣行栽培よりも手間がかかり、(慣行栽培と比較して)同じ労力でできる数量にはやはり差がでます。

 また、様々な種類の作物を栽培する場合と単一の作物を栽培する場合を比較すると、生産量という意味では後者の方がたくさんの量をつくりやすくなります。

 さらに、あまり一般には出回っていない希少な作物については単価は高くなりますが、需要自体がそれほど大きくないため、販売量という意味ではやはり小さくなってしまいます。

 したがって、付加価値の高い作物を作って販売しようとすると単価は高いものの数量が伸びず、たくさん作れてたくさん売れる作物を栽培、販売しようとすると数量は伸びますが単価が低くなります。

 一方で、以前のnoteでも説明した通り、流通については、市場流通と産直流通でざっくりと下記のようなメリット・デメリットが存在します。

○ 市場流通は”数量”に強いが”単価”には弱い(相場が高騰する場合は短期的に産直流通よりも単価が高くなることももちろんありますが、相対的に価格は産直流通よりも低くなることが多いです)

○ 産直流通は”単価”に強いが”数量”には弱い(売り先によってさばけるキャパは様々ですが、全量引き取りが原則の市場流通に比べると、販売数量のロットは市場流通よりも小さくなることが多いです)

 「そんなの当たり前でしょ」と思われたかもしれないですが、農業や青果分野に興味を持っているという人でも、この大前提を理解していない方がとても多かったりします。 

 生産者さんの営農スタイルが様々であることを理解することなしに、最適な農産物の流通方法がなんなのかという議論することの無意味さが少しは分かって頂けたかと思います。

 弊社も流通及び小売事業を手がける上で、ありがたいことに全国のたくさんの生産者さんから販売に関するお問い合わせを頂くのですが、まずは、その生産者さんの営農スタイルやつくっている農産物などをしっかりと理解した上で、適切な流通や取引、売り方や事業をご提案できるように心がけています。

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