市場流通と産直流通どちらが良いのか!?青果流通の仕組み②

<青果流通の全体像>

今回の記事では国内の青果流通の全体像及び市場流通についてお伝えします。まず下記の図をご覧ください。

 上記の図は国内の青果流通をほぼ100%網羅した図です。左側の生産者(グレー)から右側の消費者(オレンジ)まで様々な流通経路を通って青果物は消費者のもとへ運ばれています。

 流通総額は野菜が約2兆5,000億円、くだものが約7,000億円で青果の合計でいうと3兆2,000億円となっています。青い四角で囲まれた部分を通る流通が卸売市場流通であり、一般的に”市場流通”と言われています。 

 産地で栽培された農産物はざっくりと大きく分けると、この市場流通か、それ以外(市場外流通)のどちらかの方法で消費者へ供給されます。

 よくある誤解としては、”市場流通はどんどん衰退していて、市場外流通がどんどん増えている”という一般的なイメージです。完全に間違ってはいないものの、青果業界の中にいる人間としては、この一般のイメージはある部分ではYES、ある部分ではNOというのが正確なところだと思います。

 「え、市場流通の割合って数字でみると確実に低下しているよね?」という質問に対しての答えはYES です。2018年の青果の市場経由率は58%と確かに数字だけみると30年前の80%強から低下しています。

ただ、実態を正確に理解する上で重要なのはこの”青果”の部分をもう少し分解してみることが必要です。

 市場経由率が低下している大きな原因の一つは加工用のくだものです。加工用のくだものは海外から輸入される外国産であることが多く、近年、この加工用の原料については市場を通さず、輸入元である商社が直接食品加工会社などへ販売を行うケースが多くなっていて、このことが青果物の市場経由率低下の大きな要因となっています。

 では一般的に私たちがスーパーなどの小売店で購入する国産の青果物についてはどうかということで見てみると、未だ実に約8割が市場流通によって消費者のもとへ届いています。

 すなわち、世間では時代遅れで非効率なイメージの卸売市場流通は依然、青果流通(特に一般の消費者が消費する野菜やくだもの)の基幹的なインフラとしての役割を果たしており、業界内で流通について少しでも知っている人間からすると市場流通不要論は青果流通の実情を知らない人の意見だと思ってしまいます。

 一方で、市場外流通の中でも市場流通と対立軸で描きやすく、新しい流通として一般的にメディアなどに取り上げられることの多い、産地直送取引や直売所、マルシェなどの”産直流通(上の図でいう下の部分)”について見てみると、青果流通全体にしめる割合は未だ1割程度というのが実情です。

 2010年頃から様々なIT系のスタートアップがこの産直流通(特にCtoCやBtoC)の分野に参入したのですが、本当の意味で成功している事業者は非常に少ないです(有名どころのサービスの事業者や投資家、関係者とあらかた話はしました)。

 かく言う自分の会社も2016年に”お気に入りの農家さんを見つける”をコンセプトに農家と消費者を直接繋ぐインターネットを使った有機農産物の産直プラットフォーム”toriii(トリー)“をスタートしたのですが、事業としては非常に厳しかったです。この産直流通の難しさ(事業としてのスケールの難しさ)については別のところで説明します。

 次回は、卸売市場流通について具体的な例をあげながらお伝えします。