今回は出荷者が市場を通さずに直接需要家へ販売を行う市場外流通(産直流通)についてお伝えします。

<市場外流通(産直流通)について>
<市場外流通(流通事業者による直販パターン)>
生産者によって栽培された作物が、地元の”農協”または”地場商社”、”出荷組合”などの流通事業者へ持ち込まれた後に(または流通事業者によって集荷された後に)、市場を通さず、直接スーパーなどの量販店や食品加工工場、飲食店、個人消費者などに出荷、販売される流通です(青果流通の図の下から3本目の矢印)。
<市場外流通(生産者による直販パターン)>
生産者の直販に関しては、個人消費者や飲食店向けにお野菜セットなどを生産者自身が配送(遠隔地の場合には、宅急便などで直接発送)するパターン、地元スーパーなどに直接持ち込み販売をするパターン、生産者のもつ直売所(よく畑の前などにある小屋に野菜がおいてあるようなイメージの直売所)やJAなど第三者が運営する直売所や道の駅、マルシェなどに出品(出店)をして直接消費者へ販売するパターンなどが存在します(青果流通の図の下2本の矢印)。

次に市場外流通を利用する生産者と消費者のメリット・デメリットをまとめると
<市場外流通のメリット(対生産者)>
○ 販売価格の決定権がある(市場価格と比べて価格が安定する)○ 市場流通と比べて中間流通事業者が少ない分、販売代金から引かれる手数料が少ない
<市場外流通のデメリット(対生産者)>
○ 生産した数量が多い場合、すべての農産物を販売するのが難しい○ 出荷に宅急便を利用する場合、送料の負担が大きい(自身で配送する場合には配送コスト(時間と手間)が大きい
○ 顧客からのクレーム処理に一つずつ対応する必要がある(間に流通事業者が入る場合はその限りではない)
<市場外流通のメリット(対消費者)>
○ 生産者の情報がわかりやすい(安心感)○ 鮮度の良いものが手に入りやすい
<市場外流通のデメリット(対消費者)>
○ 宅急便を使用する場合、送料が高いため商品価格が高くなりやすい○ 一年を通して安定的に同じ商品を購入することが難しい
<市場流通と産直流通ってどちらが良いの!?>
こうして説明すると、「結局のところ、市場流通と市場外流通(産直流通)だとどちらが良いの?」という質問が必ずでてきますが、その質問に対する自分の答えはシンプルで
“それぞれの生産者と消費者次第。以上!“
という感じです(笑)
一口に生産者といっても、少ない品目(品目=作物の種類)を大量につくっている生産者、珍しい野菜やくだものなど多品目を少量ずつ作っている生産者で作り方も売り方も全然異なりますし、農薬や化学肥料の使用の有無、消費者との関わりに対するポリシーの違いなどでもベストな流通方法はそれぞれ異なっています。
消費者も、鮮度さえ良ければ農薬や化学肥料の使用については気にしないという消費者もいれば、農薬使用の有無、作り手の顔が見えることを重視する消費者もいます。
野菜やくだものの値段についても、とにかく安いものがほしいという消費者もいれば、値段はある程度高くても構わないので、自分の納得できる野菜やくだものがほしいという消費者もいます。
だれが正解というものはもちろんなく、流通もそれぞれの生産者や消費者に応じていろいろな選択肢があるべきですし、それぞれが最適だと思う流通を使えば良いのではというのが個人的な意見です。
また、実際のところ、生産者も消費者も市場流通か市場外流通かの一択ではなく、市場にも出しながら、地元のスーパーへ直接販売、直売所でも販売している生産者もいれば、普段使いの野菜は直接生産者から買いながら、その他の野菜やくだものについてはスーパーや八百屋で買うという消費者もたくさんいます。
現在の青果流通は、白か黒かというよりは、グレーの濃さが様々という表現が一番ピッタリだと思っています。
以上、青果流通の実情をまとめると下記となります。
○ 国産青果物においては、この10年間、その割合は約8割を占め、市場流通が依然重要なポジションを占めている。
○ 世間的にはよく取り上げられる産直取引については、実態としてはそれほど大きく伸びてはいない(伸び悩んでいる)。
○ 市場流通も市場外流通もそれぞれメリット・デメリットがあり、生産者、消費者それぞれのやり方や考え方によって最適な流通方法は異なる(現在はそれぞれの流通をミックスして利用し、全体で最適な販売、購入をする生産者や消費者が多い)