次に闇のベールに包まれている(別に全然闇でもネガティブなものでもないのですが・・・)卸売場についてみていくと、まず卸売場での売り手は仲卸ではなく卸売会社となります(上記の図参照)。
仲卸売場の売手であった仲卸業者も基本的にはこの卸売場で卸売会社から購入した青果物を仲卸売場で販売しています(直引きといって、卸売会社を通さず、産地の出荷者から直接仕入れを行なっている場合もあります)
そして、卸売場で卸売会社から青果を仕入れるためには”買参権“の取得が必要となります。すなわち、卸売場で取引を行う事業者は、買参権を持ったその道のプロたちのみといえます。
売手が卸売会社であること、取引には買参権が必要であることの2点が卸売場と仲卸売場の大きな違いです。

<市場仕入れの登竜門”買参権”の取得>
買参権を取得するためには、各市場を運営する開設者(市場のオーナー的存在)へ申請し、承認をしてもらう必要があるのですが、そのためには表向きには”業界経験”と”保証金(&加入金)”のふたつが必要となる市場が多いです。
”業界経験”というのは、大体の市場で、”3年以上青果の販売に携わったことがある事業者”、というのが申請の条件としてつけられていて、要するにど素人はお断りということになっています。
”保証金”とは、市場の仕組み上、購入した商品代金は3〜5日後に引き落とし、または振込支払いを行うのですが(市場によって支払日と支払い方法は若干異なる)、そうなると、たまに、商品を購入したものの、3日後にキャッシュがなく代金の支払ができないという事業者がでます(自転車操業的な八百屋さんに多かったりします・・・)。
ひと昔前だと、市場で大量に仕入れをして、3日後に飛ぶみたいなことを故意的にする事業者も多かったみたいです・・・。そうしたリスクを未然に防ぐため、市場側は売買参加者に対して担保として保証金(不動産賃貸でいう敷金のようなイメージ)の差し出しを要求します。
金額としては、年間仕入総額の10%くらいが相場となっています。ただ、保証金なので、買参権を返上した場合にはこの保証金は戻ってきます。(加入金は開設者へ支払うお金だが1万円程度と高額ではなかった気がします)。
先ほど表向きと書いたのは、実際上記の二つの条件を満たしても必ずしも買参権を取得できないケースをチラホラと耳にするからです。ここでポイントとなるのが市場の”商業組合(以下:組合)”という存在です。
<組合への参加なくして買参権の取得なし>
買参権を取得し、売買参加者となった事業者はこの組合へ参加する必要があるのですが、実態としては開設者への買参権取得の申請については、組合との面接(身辺調査)をパスしなければいけない形となっています。
各組合には村の長老的な組合長がおり、この組合長の承認なくして、組合への参加は不可能です(組合への参加ができない=開設者への申請ができない、という裏の公式が成り立ちます)。
すなわちこの組合が開設者の代わりに、新規の買参権希望者を審査する役割を果たしているといえます(開設者は基本的に組合がOKであれば問題なく買参権をくれます)。
組合というのは、売買参加者の集まりでもあり、わるい言い方をすると八百屋(青果小売)の既得権益を守ろうとする人たちの集まりです(かっこよく言うとギルド的なものです)。
当然、新しい組合員(売買参加者)の増加は、仕入・販売において競合が増えることを意味することもあり、既存の組合員としては新参者即ウェルカムという感じにはなりにくい力学が働きます。そういう意味でも組合員の絶対的なトップである組合長にどう認めてもらうかが買参権取得のための一つのポイントといえます。
買参権の取得を目指す人や事業者へのアドバイスとしては、まずは市場内関係者(卸売事業者や仲卸、買参人など)と仲良くなり、そこからの紹介ということで組合へ繋いでもらうのが一番スムーズだと思います。
誤解があってはいけないのでいくつか補足しておくと、組合員である売買参加者の人たち(八百屋さんたち)は基本的にはやさしいです。弊社も市場に入って右も左もわからなかった頃は他の八百屋さんたちにすごく助けてもらいました。
そして、昔に比べてだいぶ新規事業者の買参権取得のハードルは相当下がっており、ウェルカムな感じになってきています。これは既存の売買参加者の高齢化も大いに関係していると思います。
実際、市場の売買参加者の大半が高齢の方であり(よく農家の高齢化が叫ばれるが、八百屋さん(小売)の高齢化もかなり進行しています)、彼らのほとんどがすでに一昔前の八百屋が儲かった時代にひと財産を築いた人たちです。
どちらかというと自分たちの権益を守ろうと言うよりは、若い人を育ててやろうという気持ちが大きかったりします(これは自分たちのような新参者にとってはすごいありがたいことです)
また、市場側(開設者&卸売事業者)としても将来を見据えた若い事業者、法人格を有する事業者などの取り込みが急務となっているのが実際のところであり、そういう意味では昔と比べると買参権も大分取得しやすくなっていると言えます。
ただ、以前とある中央卸売市場にある卸売会社の役員にこのあたりの話を聞いたところ、市場としては、ある程度の数量を買える(仕入量の多い)規模の大きな新規参加者は歓迎だが、町の小さな八百屋さんみたいな仕入量がそれほど見込めない事業者についてはそれほど欲していないというリアルな意見もありました・・・。
尚、買参権の取得方法については、東京都など地域の自治体が開設者(持ち主)となっている主要な卸売市場の場合は上記のようなケースが多いのですが、開設者が民間企業などの地方市場の場合は、それぞれ買参権の取得方法も異なったり、組合の影響力についてもマチマチだったりするので念の為、補足しておきます。
ちなみにこの買参権というのは市場ごとに取得が必要となります。分かりやすくいうと、例えば、市場Aで買参権を取得しても、市場Bで仕入を行うためには新たに市場Bの買参権が必要となります(このことについても個人的に色々と思うところはあるが、長くなりそうなのでスキップします)。
<買参権を取得するメリットは?>
なんとか買参権を取得できたとして、買参権をとって卸売場で仕入れができるようになると得られるメリットについては下記の通りです。
○ 仲介業者を通さず卸売会社から直接買えるので仲介業者の手数料分が安くなる(10%程度?)
○ 前日に市場に届いた鮮度の良い品物を買える可能性が高くなる
○ 競売(セリ)に参加できるので、その時々で発生する投げ売り品(市場側が売り切りたいためにセリにかける商品)などを安価に購入できる。
上記の各項目はいろいろと補足が必要なのですが、長くなってしまったので今回はここまでとし、続きは次回とします。