<需給の具合で立場が大逆転!?工業製品とは異なる青果取引の特徴>
前回のブログでは、卸売会社の担当者と買参人の関係についてお話しました。前回のブログを読んで頂くと、市場取引における卸売会社の担当者最強説が浮上してくるのですが(実際そんな感じではあるのですが)、そうシンプルにいかないのが青果取引の面白いところです。
例えば自動車業界の場合、下請け(部品メーカー)と元請け(完成車メーカー)の力関係は(作る部品の希少性にもよると思いますが)基本的には元請けの立ち場が常に上という構図になっています。そしてこれは一年中変わることはないと思います。
一方で、青果市場取引においても、卸売会社の立場が買参人より常に力関係が上かという実はそうでもなかったりします。

どういうことかと言うと、青果の需給次第では、卸売会社と買参人の立場が逆転することも結構あります。
例えば、供給(市場への入荷量)よりも需要(買参人の注文量)が大幅に大きい場合、力関係は卸売会社>買参人となります。
逆に、産地からの供給(市場への荷物の入荷)が需要よりも大幅に大きい場合、力関係は卸売会社<買参人となります。
こういうときに普段強気で買参人に当たっている担当者に対しては、買参人もだれも手を差し伸べてくれないので、品物が売れない(在庫を大量に抱える)という状況に陥ります。卸売会社として、市場内では1社独占であったとしても、市場外では競合(他市場の卸売会社や直接流通を行う事業者など)と産地(農家や農協、出荷組合など)の荷物の取り合いを行なっているのが実情です。
そのため、仮に市場への入荷量が多すぎて品物が売れなかったり、安値で売りすぎると、次回以降、産地からの出荷が少なくなったり(他の市場に回される)、最悪出荷をしてもらえないという事態が発生するため(卸売会社は委託販売手数料商売のためものが動かないと利益がでない)、卸売会社もプレッシャーがかかる構造にはなっています(この辺りは別noteで詳しく記載します)。
そして天候にもろ左右される青果業界では、この力関係の逆転が結構頻繁に起きたりします。
これらが意味するところとして、卸売会社にしろ、買参人にしろ、自分の立場が強いときに相手に対してあまりにも横柄な態度をとってしまったり強気にでてしまうと、立場が逆になったときに倍返しをされてしまうということです。
そのため、青果市場内では1社独占である卸売会社であっても、担当者と買参人の立場が絶妙のバランスで成り立っているといえます。
ここで何点か補足しておくと、近年、市場の各プレイヤーにおける境界線がかなり曖昧になってきているため、買参人である仲卸業者が自ら産地と交渉し、荷物を卸売会社を通さず直接持ってくる“直荷引き”というやり方も多くなってきています(最新の統計では、この産地からの直荷引きが仲卸業者の仕入れの20%くらいを占めるまでになっている)。

また、実際に買参人である弊社も買参権を取得している豊島市場以外にも、別の市場から荷物を仕入れたり、農家から直接仕入れを行なったりもしています。
すなわち、卸売会社として昔のように自分たちからしか仕入れができないだろうと自らの立場に安住していられなくもなってきているのが実情でもあります。
さらに、近年の消費者における食の多様化と人口減少から生鮮品としての青果の需要は年々縮小してきており、市場によっては、市場ごと沈んでいくというような状況もいたるところで起きてきていて、卸売会社にとっても市場の買参人を育てることで市場全体のパイを維持する、または取引量を大きくすることが急務な状況にもなってきています。(下記の図参照)。

そして最後の補足として、このnoteでは市場の基本的な構造として卸売会社の力は市場内では何だかんだ言ってもけっこう強いと述べてきたのですが、買参人に対して親身になって対応してくれる卸売会社の担当者もたくさんいれば、とても横柄な担当者もいるので、このあたりも担当者の人柄次第みたいなところも大きいことは補足しておく必要があります。
<ギブアンドテイクが特に大切な青果業界>
最後に卸売会社の担当者と良い関係を築くためのポイントについて述べたいと思います。
結論から言うと、
担当者が嬉しいことをしてあげる
これに尽きます(※ 決して担当者にゴマをするというわけではなく、お互いの信頼関係をつくるという意味です)。
では担当者が嬉しいこととはどういうことなのでしょうか。簡単に言ってしまうと上記でもすでに述べている通り、入荷量が多く、買い手が見つけられないような相場のときに、それらの品物を買ってあげることです。担当者にとって売り先が見つけられないときに最後の砦として品物を引き取ってくれる(頼りになる)買参人は非常に重宝される存在なのです。
これを繰り返すと、逆に供給が少なく需要が多い相場の際に、優先的に品物を販売してくれたり、どうしても必要な品物があった際に他の買参人と交渉してでも品物を確保してくれたりします。また、日頃の価格交渉でも交渉をしやすくなったりします。市場で仕入れを行う場合には、ぜひこの点に気をつけて仕入れを行なってみてください。
おまけとして、卸売会社の担当者にヒアリングした、好かれる行為、嫌われる行為についてリストアップしておきます。
<担当者に好かれる行為>
○ 品物が売れない(入荷量が多い)ときに無理をしてでも買ってくれる○ 安定的に品物を買ってくれる(日々産地と入荷量のやりとりを行う卸売会社の担当者にとって、安定的な売り先があれば入荷と販売の見当が立てやすいのでありがたい。例えば、ある日は30ケース買って、ある日は0ケース、ある日は5ケース買うといった買参人よりも、毎日安定的に10ケース買ってくれる買参人の方が評価は高くなる)
○ 値引き交渉を頻繁にしてこない。
○ しっかりと挨拶をする(超基本的なことですが、これは市場では結構重要だったりします笑)
<担当者に嫌われる行為>
○ それほど数量も買わないのに頻繁に値引き交渉をしてくる(これは結構はじめのころ自分がやっていて、後から聞くと結構嫌われていたらしい・・・w)○ 事前に注文した量を揃えられないとブチギレる(年配の八百屋さんなどに多かったりする・・・)
○ 挨拶がない
以上、今回のブログの内容をまとめると
○ 現在の市場取引ではセリ取引ではなく、卸売会社の担当者と買参人がそれぞれ個別に取引交渉を行う”相対取引”が主流。
○ 事前に翌日に必要な商品を注文しておく、事前注文取引も市場取引においては重要な手段となっている。
○ 供給が常に一定ではない青果物という商品の特性上、”相対取引”、”事前注文取引”においては、卸売会社の担当者との人間関係が非常に重要。
○ ただ、需給バランスが天候次第でコロコロと入れ替わる青果取引においては、売手と買いての力関係もコロコロ入れ替わったりする(長期的な関係づくりが大切)。
次回は相対取引、事前注文取引の対となる”セリ取引”、”当日取引”についてお伝えします。